今回は、たくさんの人々、企業、社会を苦しめている新型コロナウイルス(COVID19)について、
コロナ禍でビジネストレンドがどのように変化し、DXにより何に適応していくべきか、見ていきたいと思います。
さらに、コロナ禍におけるビジネストレンドの変化にキャッチアップするために、
デザイン思考により顧客の変化・真のニーズを抽出し、解決策を生み出していく手法も紹介します。
◯新型コロナウイルスが与えたビジネストレンドの変化
新型コロナウイルスにより、顧客・ビジネス環境が大きく変化している状況において、
ビジネストレンドの変化を契機に、DXに取り組むことで、生き残るだけではなく、
新たなビジネスチャンスを取り込んでいくこと必要です。
特に、コロナ禍で人とのコミュニケーション方法が、オンラインベースになる等、
デジタル技術がより一層、生活・社会の在り方の前提となってきているため、
DXの必要性が非常に高まっています。
コロナ禍で経済と社会全体の機能がまったく異なるものに変質したことを踏まえ、
DXの寵児と呼ばれているコンサルティングファームのアクセンチュア社が「7つのトレンド」を提唱しています。
◯アクセンチュア社が提唱する「7つのトレンド」(要約)
1.歴史的転換期
パンデミックによって人々が物事を体験する場所や方法が変わり、慣れ親しんだ快適さから
切り離された感覚が生まれました。
多くの人にとって、仕事や買い物、学習、交流、育児、健康管理など、社会とのあらゆる接点が変わります。
企業は人々との関わりについて新しい方法を模索し、新たな体験を提供することが求められています。
2.DIYイノベーション
急激な生活の変化に伴って人々は、例えばアイロン台をデスク代わりにしたり、親が先生になったりと、
創造性を発揮して困難を乗り越えようとしています。
そして、このような人間の創意工夫がイノベーションの源泉につながり、テクノロジーは人々のアイデアを
後押しする新たな役割を担うようになりました。
政治家からパーソナルトレーナーまで、SNSやテレビゲームなどのプラットフォームを活用した
イベントなどを開催し、メッセージを発信しています。
企業の役割は、完成されたソリューションを提供することから、人々がイノベーションを生み出す環境を
整えることに移り変わってきています。
3.新しい時代の組織のあり方(テレワーク)
在宅勤務(テレワーク)は、オフィスに住んでいると言っても過言ではなく、
雇用主と従業員との関係にも大きな影響を与えています。
自宅からビデオ会議に参加する際の服装について最終決定権を持っているのは誰か、
または在宅勤務者のプライバシーを保護する責任は誰にあるのかなど、新たな課題も浮上しています。
人と仕事、そして雇用主と従業員との関係には恒久的な変化が起こっています。
4.インタラクションの旅立ち(オンライン体験による感動)
生活者は画面を通して外の世界とつながる時間が増え、その結果、簡単に使えるデジタル・テンプレートが、
ときにオンライン体験を代わり映えのないものにしていることに気づき始めています。
企業は、オンライン体験に大きな感動や喜び、思いがけない偶然の出会いを提供するために、
デザインやコンテンツ、観客間での交流の方法を再考しなければなりません。
5.流動的なサプライチェーン(物理的な拠点を見直せ)
製品の入手方法やサービスの受け方が変わり、企業はサプライチェーンや物理的な拠点について
再検討を迫られてます。
また、かつては店舗で購入して満足していましたが、今は購入前から、顧客に
どこで喜びを感じてもらうのかを考え直さなければりません。
そのために企業は、組織全体を柔軟かつ迅速に適応させていく必要があります。
6.共感への挑戦(存在意義の再検討)
パンデミックはさまざまな社会問題や不平等を浮き彫りにしました。
生活者は企業がどのような立ち位置で何を表現しているかに注視しています。
企業は存在意義を再確認し、それを実際に体現する必要があります。
7.習慣の消失と創造
生活の中で大切にされてきた習慣が失われ、人々の幸福感に影を落としています。
従来の習慣に込めてきた幸せや安らぎを取り戻せるよう、企業の支援が求められています。
企業は、失われた習慣によって生まれた人々の心の隙間を理解し、そ
れを埋める新たな仕掛けを設計する絶好の機会に恵まれています。
◯コロナ禍におけるビジネストレンドの変化にキャッチアップするためには?
コロナ禍におけるビジネストレンドの変化は、毎日皆さんが感じられているかと思いますが、
その変化をどのようにとらえて、ビジネスチャンスとしていけばいいのでしょうか?
アプローチの方法として、
・従業員が感じている課題や顧客の要望を収集し、日々の課題から解決策を考える【ボトムアップ】 と
・ゼロベースで、まずあるべき理想像を描いて、そことのギャップを課題とし解決策を考える【トップダウン】
の方法があります。
ボトムアップでは、日々、現場で顧客と接している従業員が感じている顧客の変化や、業務をしている中で
感じる違和感から拾い上げていくので、現実感のある着実な課題を特定できます。
しかし、それでは、目先の小さな課題解決だけで終わってしまう可能性が高いので、ゼロベースで、
そもそも事業をどうしたいのか、あるべき顧客体験は何で、それを100%提供するために変革すべきことは何か
というトップダウンで考えることが必要です。
ちなみに、トップダウンとは必ずしも経営層とは限りません。事業をどうしたいか考えるのは、
社員・ステークホルダー全員が考えるべきです。
ただし、トップダウンだけで考えた結果、現実に起こっている状況を全く無視した、
浮世離れした計画がでてくることも多々あります。
したがって、トップダウンであるべき理想像を考えつつ、ボトムアップで現実的な課題や状況を把握し、
ではどうすべきかをさまざまな観点から考えるという 両面からアプローチしていくべきです。
しかし、いきなり経営層・従業員を集めて、何か出せといっても、なかなか出てこないものです。
そこで、そういったアプローチの具体的な方法として、『デザイン思考のワークショップ』を開くことをおすすめします。
デザイン思考とは、「ユーザーも気づかない本質的なニーズを見つけ、変革させるイノベーション思考」のことで、
デザイン制作において活用されていた思考方法をビジネスに用いるアプローチとなります。
デザイン思考のワークショップを行うことで、単なる課題の列挙に留まらず、本来ユーザのニーズとは何か?を
浮かび上がらせることができます。
デザイン思考のワークショップの進め方としては以下になります。
・問題ではなく、ユーザ(顧客)中心に考える
X商品の静音性能をもっと高めるためにはどうすべきか といった問題から考えると、
Aという部品をBという部品に変えてみようといった単純な解決策しかでてきません。
一方、ユーザ中心の考えで、「X商品を手に取った人は、そもそも何に悩んでいるのか」
「なぜそれが問題だと感じているのか」といった点からアプローチすることで、
ユーザの真のニーズを掴み、最適なアクションをとることができます。
・メンバーは、偏りがでないよう、部署・役職ごちゃまぜ
こういったワークショップにおいては、現場メンバーだけでアイディアをださせようとしがちですが、
それではバイアスがかかった目先の課題を意識した意見しかでてきません。
さまざまな部署(対立することもある営業とサービス提供者など)で、
様々な役職(現場一筋のおじさまから、企画職ばかりの部長まで)を混ぜることで、
さまざまな角度からユーザの真のニーズを議論できます。
(例えば、営業から見ると手間のかかるターゲット層が、サービス提供者から見ると
サービスをすごく愛してくれている等、さまざまな見方で考えることが重要です)
・ワークショップのプロセス
① 商品を利用しようとする人が影響されている人や環境・状況『観察・共感』するところから始めましょう。
その際、具体的な事例などを混ぜて話す等、問題を抱えている人の観点から物事を考えるための共感し、
具体的にイメージすることが重要となります。
② 「ユーザーはなぜそれを問題だと感じているのか?」、「なぜその問題を起こってしまっているのか?」などの
質問を重ねながら『問題を定義』します。
③ 問題をきちんと定義した上で、解決策の『アイデアを発想』します。
どんなアイデアでもまずは肯定し、さまざまなメンバーの視点からアイデアを
出し合うことで思いもよらない発想ができます。
④ アイデアを組み合わせたり、ブラッシュアップし、アイデアを自分たち以外に発信できるように『プロトタイプ』します。
⑤ アイデアを社内等で実際に発信し、『フィードバック』を得ながら実効性を高めます。
ワークショップについては、手軽にできるものなので、着手しやすいですが、
デザイン思考のワークショップ経験のある進行役がいないと、議論が発散したり、目先の課題に終始しがちです。
社内にデザイン思考のワークショップ経験者がいない場合は、手軽なコンサルタントを時間契約で雇ってみるのも手です。
コロナ禍におけるビジネストレンドの変化にキャッチアップするために、
デザイン思考のワークショップを活用してみてはいかがでしょうか?
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