今回も前回に引き続き、DXによる売上拡大という切り口でDXの支援事例を紹介します。
解説の順番としては、前回同様に
目指したい最高の顧客体験を定義した上で
具体的に直面している課題(現状と目指したい最高の顧客体験のギャップ)に対して
DXによってどういった解決ができるか解説します。
今回は、メールマーケティング自動化(MAの機能の一つ)を活用して
自社の強みを構築して売上拡大につなげた事例について紹介します。
事例を紹介する前に、MAとは何か?をご説明します。
◯MAとは?
MAとは、Marketing Automationの略で、
一言でいうとマーケティング活動を自動化するツールです。
MAにより、見込み顧客ひとりひとりの興味の度合いに合わせた
コミュニケーションを効率的に行うことが可能になります。
近年の傾向として、顧客のニーズの多様化・複雑化に加え、
メール、webサイト、SNS、動画など、
さまざまなデジタルチャネルを通して顧客が活動するように、
ますますなってきています。
それに伴って、顧客の興味を引く(=見込み顧客を作る)という意味での
マーケティング活動もより一層、ニーズをとらえ、デジタル化に対応することが必要です。
MAは、最適なコンテンツを最適なタイミングで顧客に提供することで、
顧客情報を収集し、見込み顧客を作ります。
例えば、
「資料請求した人を見込み顧客としてリスト化する」
「資料送付1週間後に事例紹介と状況伺いのメールを送る」
「複数回資料ダウンロードや問合せをしてきた人に、
特別な割引キャンペーンの案内をメールで提案する」といった、
地道な作業を、MAに簡単な設定を施せば、すべて自動的に行うことができます。
具体的には、
-資料請求をして1週間がたったや、
-過去のメール送付をクリックした、
-A商品を契約して6か月がたった等
の条件をシナリオという形で設定し、
その条件に合致した人にあらかじめ設定しておいたメールを
自動的に送付するといったことが可能になります。
これにより、シナリオで定義したお客様の状態に合わせて、
適切なコンテンツを、人手をかけずに自動的に訴求できるということです。
さらに、メールの開封・未開封、自社サイトへの来訪など、
見込み顧客一人ひとりのデジタル行動を追跡して、一元的に管理することが可能です。
一元的に顧客のアクション等をデータ化しているので、
各施策がうまくいったか、メール送付時期は適切だったかの評価や改善を
データとして確認しながら行うことができます。
〈DX支援事例~MAを活用した営業体制~〉
人材不足で営業が拡大できない状況で、MAを活用し、
人手をかけずに自動メールマーケティングで
新規顧客開拓・既存顧客サポートを強化した事例です。
◯変革前の状況
輸入した音響商材を扱うBtoB輸入販売代理店で、社長と息子の2名で運営されています。
見本市への出展や広告、口コミ経由で申込をもらっていますが、
商材が高単価なため、売上が不安定なことが課題でした。
資金的な余裕がなく、広告の増加や営業担当者の増員は困難な状況にあったので、
コストをかけず売上を安定化させたいとお考えでした。
◯目指したい最高の顧客体験の定義
まず目指したい最高の顧客体験を、社長とディスカッションし、以下のようにまとめしました。
「アーティストが素晴らしいサウンド体験を提供できる環境を作る」
現状はもの売り色が強いですが、社長の思いがでています。
◯課題(現状と目指したい最高の顧客体験のギャップ)
目指したい最高の顧客体験に対して、現状何が課題となっているか、
ヒアリングした結果、以下の2点が大きな課題として浮かび上がってきました。
①商材を売るだけでサウンド体験の環境構築に向けた支援ができていない
②輸入元メーカーのブランド力や商品力により顧客獲得しており、
当社の価値が顧客に認められていない(顧客獲得に繋がっていない)
◯解決策
強みとして、長年業界で営業してきたことによる業界の知識や、
社長の人脈があったので、目指したい最高の顧客体験の実現に向け、
そういった強みを活用しつつ、
今後も生き残っていけるような経営の土台をつくる方針で検討し、
以下のような解決策を打ちました。
①社長が保有している大量の名刺情報を、名刺サービスでデータ化し、
売りっぱなし状態からシステムで情報管理することで、
継続的な付き合いも見据えた顧客基盤を整備
②顧客に対してメールで、
-最新の商品情報の紹介
-音響改善のテクニック
-顧客の成功事例
をMAを活用して定期配信(月一回メール文作成)
③新規購入企業に対して、商品に合わせて
購入直後に商品を長持ちさせる管理方法等のアドバイスや
メーカー等が実施するメンテナンスタイミングに合わせた
関連商品の紹介をMAを活用して自動配信
(事前に定型メールを作成し、A商品購入後300日等の条件に
合致した顧客に自動でメールを送付)
④配信したメールや顧客とのやり取り、
取引記録をMAで管理し、顧客とのやり取りを継続化
これらの施策により、自社の提供価値が薄かった輸入販売代理業から、
顧客基盤・顧客サポートを強みとする音響アドバイザーに変革することができました。
実際はこのようにきれいな話ばかりではないですが、
小規模企業において、
コストや人手をかけずに今後も生き残っていく経営基盤として、
MAを活用した営業体制を構築した
という支援事例を紹介しました。
MAの活用にあたっては、
-どのような条件でどのようなメールを配信するかというシナリオの作成や、
-MAを活用して既存の営業をどのように変えるべきか、
-さらに経営・改善にかつようするための結果レポートをどうみるか
を決めることが重要です。
中小企業DXプロボノでは、豊富なDX経験のあるコンサルタントが、
お客様の実情に合わせて、
デジタルを活用した経営基盤づくりや、
MAの導入サポート・営業体制の変革サポート・活用施策の立案まで支援しています。
今回ご紹介した事例を踏まえ、御社でも活かせることがないか
検討のお役にたてますと幸いです。
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